荒天の後

2010年12月13日月曜日(原題は12月3日荒天の後)

今日(12月3日)は京都に帰る予定にしていたが、玉川町の自宅まで帰り着いても、風が強く、嫌な予感。案の定、サンダーバードは、運休が相次いでいた。去年の私ならば、なにも考えずに駅まで行き、特急に乗り込み、強風のため3時間車中に閉じ込められたり、大雪で特急が立ち往生し、6メートルも雪のつもる新潟県の山中の駅で降ろされたり、散々な目に遭うところだが、今年は違う。さっさと切符をキャンセルし、我ながら、実にスマートに予定を順延した。予想通り、私の乗るはずだったサンダーバードは、2-3時間遅れたらしい。

私の自家用車は、すでにスタッドレスタイヤを履き、雪かきのスコップもモップも搭載済み、降雪をこちらから待ち構えるぞという余裕の状況。山靴には、スパッツと簡易アイゼンも装着可能にしてある。

もう何年も住んだかのように書くが、12月3日は、北陸が冬に向かう典型的な一過程を示した。急激な温度の下降と、雷、突風。夕方からは、お定まりの霰だ。マンションの一階に住んでいると、世の終わりのような雷鳴と戦場にいるようなバラバラという衝突音を聞くことになる。

この荒れる天気にも、ちょっとしたお楽しみがある。荒れた天気の翌日、大学に向かう浅野川左岸の道を行くと、朝は、太陽の角度がわるく輪郭がおぼつかないが、用事があって夕刻にたまたま同じ進路をとると、頂上付近のみが雪を冠り、夕日に照らされて浮かび上がる医王山を進行方向に見上げることのできる通りがある。石川と富山の県境の山である。薬草がたくさん採れるということがこの峰の名の由来らしい。秋にひとりで登る心づもりにしていたが、熊の出没で、腰が引けてやめた。金沢側から見ると右斜におちる面の色がなんとも艶かしい。

そういえば、11月中旬のそんな日に、東京出張のため、夕刻小松空港を飛び立つ便を使った。そこから見た白山のはっと息を呑むような姿。室堂から上の高山帯のみが冠雪し、ほぼ水平方向からの夕日に照らされ、普段はわからない、谷と尾根のつくる深い陰影を強調する。加賀平野から白山を見上げると、富山平野から立山連峰を見上げるのとは違い、手前にも小高い峰峰があるので、普段は、実際どれが白山か僕にも判然としない。ところが、11月の絶妙な冠雪は、どの峰が白山の頂であるかを明確に示す。屹立するとは、まさにこのことであろう。

身の回りにも、そんなことがたくさんある。日頃なんとも思っていなかったひとが、なにかのきっかけで、たとえば、論文が世に認められるなど、実は高峰であったことに、気づくことがある。むしろ、高峰がすぐそばにそびえていてもそうと気づかない自らの愚かさを気づくべきであろう。少なくとも、自分がお世話をする学生やポスドクの才能を見逃すなんてことはしないように気を引き締めたいし、高峰のまぶしさに耐えかねてそれを根こそぎ倒そうとする愚はおかすまいと思う。

(写真は今年の夏にとうとうのぼった槍ヶ岳の頂上。私あるいは長男が撮影。)

投稿者: 髙橋 智聡

ピアノを50年以上弾いている。芸事が大好きで、ほかに、茶道、義太夫三味線、能管、ドイツリートなどいろいろ手を出したが、すべて下手の横好きだった。西洋の古典音楽と日本の文楽をこよなく愛する。この15年ほど、夏山行にはまっているが、太ってしまったのと、まとまった時間がとれないのが悩み。金沢からなら、2−3時間もあれば、北アルプスの主要な峰々の登り口に到達する。そして、虎ファン。現、金沢大学がん進展制御研究所教授、内科医。研究の話は、HPで。 http://omb.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html

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